発送電分離の背景や目的についてご存じでしょうか。今回は発送電分離について解説します。
この記事を最後まで読めば、発送電分離とは何か。現在の電力会社の体系やメリット、デメリットを理解することができます。
生活に欠かすことのできない電気業界の仕組みを理解しておきましょう。
発送電分離とは
発送電分離とはその名の通り、「発電」と「送配電」を分離することです。
今までは各電力会社の供給地域内の電力の発電、送配電、販売までを行っていました。
しかし、現在は2020年4月に送配電部門の中立性を確保する観点から、一般送配電事業者が小売電事業や発電事業を禁止し、組織的にも法的分離されました。
法的分離により「発電」「送配電」「小売」部門に組織がわかれて運用されることになりました。
「発電」「送配電」「小売」部門を簡単に説明すると以下の通りです。
「発電」
原子力発電所、火力発電所などの発電所で電気を作ること
「送配電」
発電所から送られてきた電気を変電所を介して、家庭で使用できる電圧まで下げ、鉄塔の送電線や電柱からの配電線、引き込み線から電気を送ること
「小売」
各家庭や工場などと契約し、電気を売ること
経緯
2016年4月に電力の「小売全面自由化」によって、小売電気事業者の登録を受ければ、電力会社でなくても、電気を販売することできるようになり、私たちは様々な小売事業者から電気を購入することが可能になりました。
これにより電気料金の価格競争が発生し、市場の活性化が期待されます。
電力は発電するだけでは使用することができず、鉄塔などの送電線や電柱からの配電線、引き込み線を経由して供給することで使用することです。
この電気を送る「送配電設備」は電力会社の所有しておりましたが、このまま運用していけば電力会社が有利になるように使用制限したり、設備構築していくことが懸念され、「発電」と「送配電」を法的分離する方向へ進めてきました。
電力関係の新規参入ビジネスを募っていくには発送電部門の中立性の確保が必要なため、「発電」「送配電」「小売」の一連で運用していた電力会社は「発送電」の法的分離することとなりました。
メリット
メリットとして以下の2点が期待されます。
- 電気料金の低廉化
- クリーンエネルギーの増加
発送電分離は「電力の自由化」を公平にするための方策なため、メリットは電力市場の活性化による電気料金の低廉化です。
電力の自由化前は地域の電力会社からしか電気を買うことができませんでしたが、電力事業の新規参入が増えることで市場が活性化され、電気料金が下がっていく可能性があります。
また、旧電力会社は送配電事業を分離することができるため、その分コストが下がることで電気料金が下がることが期待されます。
発電設備の新規参入を促進することで、太陽光発電などの再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギーが増え、低炭素社会への推進が期待されます。
デメリット
デメリットとして以下の2点が懸念されます。
- 電気料金の高騰
- 電力の供給力不足
発送電分離により電力会社等の電気事業の体制変更により、電気料金が上がる可能性もあります。
発送電分離することで「発電」「小売り」の各事業が分離することでコストを集中することで電気料金が電気料金を下げることが期待されますが、もともと同じ組織でやっていた業務を分離することで、今まで通りの運用ができないため、効率性が低下し、余計なコストがかかる恐れがあり、逆に電気料金が上がる可能性があります。
また、価格競争によって電気料金の高騰が懸念されます。
電力供給が不足した場合、調達コストの増加や意図的に電気料金を上げることで電気料金が上がる可能性があります。
発電所が広域にできれば、その分送配電設備が必要になり、建設コストがかかり、託送料金が上がるなど、電気料金が上がるリスクはさまざまあります。
発電事業は効率的に運用できず、コストを重視するあまり、メンテナンスや管理がおろそかになり、老朽化により運転できなくなります。
そして事業を撤退した場合も、想定していた電力量が確保できず、供給力不足となる可能性があります。
発送電分離以降の電力会社の形態
発送電分離以降、電力会社は法的分離により以下の方式により事業形態が変更になりました。
【発送電分離前】
発電・送電・小売の業務・組織を一体で運用
【持ち株会社方式】
電気事業を行わない、持ち株会社を設置しその下に「発電」「送電」「小売」会社を設立し運用していく
・採用している主な電力会社(東京、中部)
(例)東京電力
【発電・小売親会社方式】
「発電」「小売」会社を一体とし、その下に「送配電」会社を設立し運用してく
・採用している主な電力会社(関西、東北、中国、九州など)
(例)関西電力
今後の電力業界
東日本大震災後に検討がなされた電力システム改革やパリ協定による低炭素社会への推進など、今後も電力業界の情勢は変わっていく可能性があります。
私たちの生活に密接に関わる電力業界の動向はしっかり注視していきましょう。
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